被害者にならない為の知識-精神薬を学ぶ-
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裁判の行方
(転載禁止です。)
裁判の行方
№1
母が亡くなったのは、平成22年10月4日の事でした。
この27日前に精神科の閉鎖病棟に入院しましたが、薬の副作用で帰らぬ人となってしまいました。
67歳でした。
亡くなる前日の夕方から熱が出ていると病院から電話がありましたが、悪化しているにもかかわらず転院措置もされず、翌朝、院長から「心肺停止したので、病院に来てほしい。」と言われ、何があったのか頭が真っ白になったまま病院に向かいました。
部屋の傍らには痰の吸引器と、酸素ボンベが置いてありました。
母の亡き骸は全身がむくんでおり、黄疸も見るに明らかでした。
特に尿は17時間も出ていなかった為、お腹はパンパンに大きくなっていました。
私が裁判をしようと決断したのが、これまでの病院での様子,目の前にいる母の亡き骸を見た瞬間でした。
葬儀が終わった次の日に、院長に面会し(会話はICレコーダーで録音)、カルテ・検査結果を持ち帰り、弁護士の先生にそれを見せました。
カルテはかなり適当にしか書かれておらず、これからは詳細が分からず調べ進めるのに苦労しました。
母の「うつ」は15年前から、年に決まって2回程、梅雨の時期と年末年始あたりに症状が出ていました。
常に薬を飲んでいた訳ではなく、「うつ」の症状が出たら心療内科に行き薬を処方してもらっていました。
責任感が強く、きれい好き、誰とでもすぐ打ち解け、旅行が大好きだった母。
平成22年9月の始めに、夜中に家を飛び出したため、みんなで探し回りました。
その次の日には包丁を持ち出し、父に「殺して!」と号泣しました。
相当つらかったと思います。
今まで2回希死念慮はありましたが、2週間位かけて回復していました。
今回は目が離せなく、危険と思われる物はすべて隠したりもしました。
通っていた心療内科の医師に相談し、どうしようかと迷ったのですが、危険も差し迫っている事と父の体力・精神力も限界に近くなっている事も考え、母を近くの入院施設のある病院に入院させる事にしました。
その入院した病院こそが今回の裁判で争った病院なのです。
№2
母は「うつ」になって15年、うつでの入院は初めてでした。
実は、数年前に年に1度受けていた市の健康診断で「不整脈」があることを指摘され、循環器科にも通うようになりました。
入院する際に、「不整脈」「心臓肥大」だという事も、薬の事も(飲んでいた薬は全部渡し説明)、院長には伝えていました。
ちなみに、「不整脈」も「心臓肥大」も、日常生活には何ら支障のない程度でした。
入院後の経過
9月7日、入院後の処方 (1日あたり・循環器科の薬含む)
デプロメール 50㎎(3T) ラックB微粒 3g(3T) ルジオミール 25㎎(4T)
デパス0.5㎎ (1T) レンドルミン錠 (1T) ロヒプノール 1㎎(1T)
ワーファリン (1T) ベルベッサーR100 (1T) ディオバン40㎎ (1T)
入院後に、胸部レントゲン,心電図,血液・尿検査をしているが、亡くなるまで検査はこの1回のみとなっている。
9月11日、ルジオミール25㎎ を1錠追加して1日125㎎に増量後、症状がいくらか緩和したそう。
9月24日、幻視や幻聴があり、フラフラ感があって、夜間トイレの転倒防止のため、ロヒプノール1㎎を抜去。
今までどんなに悪化した時でも幻視や幻聴の症状は一度もありませんでした。
9月29日、妄想言動が出たので、リスパダール液2g を投与。この頃から自立歩行困難となりました。
№3
9月30日、微熱,四肢浮腫,咳嗽あり。言語不明瞭で呂律がまわらず。
10月1日、面会にいくたびに悪化しているのに、説明が全くないことから、院長に「薬を減らしてほしい。」と頼みに行きました。
ルジオミール 25㎎ 3T デプロメール 50㎎ 2T の抜去
呼吸機能 SPO₂84% (SPO₂は基準値が94~97%とされている。90%未満は急性呼吸不全の可能性) 酸素投与されているのにもかかわらず下がり続けました。
10月2日、熱は36℃台に下がる。状態は安定していたという。
この日にも面会に行ったが、母は車イスに乗っていた。(首や手も自分で動かせない状態になっていた)
夜トイレに行こうとしたのか、この時にベッドから落ちて頭を打った状態で発見され、チアノーゼが出て危険だったが、何とか回復した。この事は私達家族には知らされず、この裁判の最中に看護記録を見て初めて知りました。
10月3日、再び熱が38℃台に上がる。以後、夕方に呼吸苦、熱は36℃台に急降下。
内服の精神薬を全部抜去。点滴のみ。
夜に、状態が悪化したら、救急病院に転院させるかもしれないと病院より電話が入った。
この日は一睡もせず連絡が入らない事を祈っていました。
院長は近くの自宅に帰り、朝まで一度も病院に行かなかったそう。
10月4日、朝食後(流動食のようなものを介助され全量摂取したそう。これ自体もずっと疑問に残る事だった)、8時40分、突然に顔面発汗し、激しい呼吸苦の後、バイタル不能、心肺停止。
8時50分死亡。
黄疸,チアノーゼ,浮腫を確認しました。尿は17時間出ていなかったそうです。
№4
裁判では、医師のカルテより看護師が書いた看護記録が大いに役に立ちました。
院長のカルテに関しては、裁判官より、「記述が少ないですね。これだけですか?」と院長に指摘がありました。
死亡診断書の事では、死亡原因の箇所に、「【急性循環器不全】と書いたが、正確には【心原性ショック】と書くべきでした。」とあとになって言い、あくまで薬による副作用が原因と認めようとしませんでした。
「薬の注意文書に従っていたら、風邪薬さえ処方出来ないから、注意文書は参考にならない。」とまでありました。
そして、精神科医師として20年にわたる臨床医としての経験と実績に基づき処方された適切な処方内容であって医師の責任は全く存在しないと.....。
私達原告側に対して、「前の病院で約8年間にわたって治療を受けてきた患者が治療
中に死亡しなかった事の説明がつかないのではないかと考えられる。」・・・・・。
こんなやりとりが準備書面の中で続いて、心が折れそうになった事が何度もありました。
もしかしたらこのまま負けてしまうのではないか・・・と不安になった事も度々ありました。
全国で同じように裁判をしている人達がいる,被害に苦しんでいる人達がたくさんいる、
この事を心に刻んできたからこそ、最後まで闘ってこれたんだと思います。
途中で何度も被告側から和解の提案がありましたが、断ってきました。
そして、審理入りで被告(院長)が証言台に立って、各々の弁護士から証言を求められていた場面を、私は一生忘れることはないでしょう。
2時間の中で知らなかった事実や、被告のうろたえる様子、口ごもる場面、顔色が変わる質問、今までの比にならないくらい濃縮した時間でした。
結局、母の死亡時間には被告は立会いをしておらず、正確な死亡時間はわからないままです。
裁判が終わったあとは、しばらく自分を責める日々が続きました。
やはり母は戻ってこないからです。
入院させてしまった事,早い段階で院長に談判すればよかった事,もっと早く転院させればよかった事・・・・・。
いまだに、いつもの様子と違う、ボーッとしている母の「入院は嫌だなぁ。帰ってこれるかな?」「もうすぐ家に帰れるかなぁ。」こんな言葉が脳裏に焼きついて離れません。
今、被害にあわれている方とそのご家族,そして通院しながら仕事を続けている方と関わっている方々には、こんな後悔をしてほしくありません。
裁判の行方ですが、結局のところ和解をしました。
和解といっても「勝利的和解」です。
裁判長から、完全に被告のほうに責任があるという証明となる書をいただきました。
私の大事な勝利のしるしです。
少しずつですが、精神科,心療内科の処方も変わってきているようですが、まだまだ問題は山積みです。
この文章が、少しでも問題を抱えている人達の足元を照らせる事を願ってやみません。
今回、協力いただいた方々、特に精神医療被害連絡会に資料の提供、ならびに相談にのっていただきました事を感謝いたします。
九州 Y.F
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2013/01/02(水) 15:18:13
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