被害者にならない為の知識-精神薬を学ぶ-

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子供への向精神薬処方の実態

1 はじめに
 つい30年ほど前まで、子供には精神病は発病しないと言われていた。しかし、近年では、子供にも統合失調症やうつ病が発症するとして、子供に対して統合失調症やうつ病の診断がされるようになり、それに応じて統合失調症の治療薬である抗精神病薬や抗うつ剤が処方されるようになった。また、ADHDという新しい疾病概念*1が作られ、ADHD診断と共にADHD治療薬が処方されるようになってきた。本資料では、外来の診療報酬データから2002年から2010年までの子供への処方実態が判明したことを機に、子供への向精神薬投与の問題点を指摘したい。

2 2002~2010年の子供への向精神薬処方率
 まずは、子供への向精神薬の投与実態を見て頂こう。次の2表は、6~12歳と13~18歳の2002~2004年及び2008~2010年の比較である。
6~12歳
向精神薬の種類 2002~2004年1000人あたりの処方率 2008~2010年1000人あたりの処方率 増減 増減率
抗精神病薬 0.4 1.2 +0.8 300%
抗うつ剤(新薬) 0.9 1.2 +0.3 133%
抗うつ剤(旧薬) 0.2 0.4 +0.2 200%
気分安定薬 2.9 3.6 +0.5 124%
気分安定薬(リチウム) 0.0 0.0
ADHD治療薬 0.8 1.5 +0.7 187%
抗不安・睡眠薬 0.7 0.7

13~18歳
向精神薬の種類 2002~2004年1000人あたりの処方率 2008~2010年1000人あたりの処方率 増減 増減率
抗精神病薬 2.0 3.9 +1.9 195%
抗うつ剤(新薬) 1.9 3.0 +1.1 158%
抗うつ剤(旧薬) 1.6 2.5 +0.9 156%
気分安定薬 2.9 3.0 +0.1 103%
気分安定薬(リチウム) 0.1 0.2 +0.1 200%
ADHD治療薬 0.2 0.5 +0.3 250%
抗不安・睡眠薬 4.0 4.8 +0.8 120%

3  子供への抗精神病薬の投薬の問題点
 伝統的な精神病理学では、思春期以前の子供に統合失調症はほとんど発症されないとされていた。現代精神医学は、その伝統的な精神病理学を捨ててしまい、なんの新しい発見や研究もないままに、子供にも統合失調症が発症するとした。
 抗精神病薬の医薬品添付文書(医師向けの取り扱い説明書)に記載されているように、6~12歳の子供に対する治験は行われていない。つまり、効果も安全性も確認されていないまま、子供への投与が行われている。
 最近の抗精神病薬は、統合失調症だけでなく、成人の気分障害(うつや双極性障害)に対しても適応を取得している。それに呼応した形で、子供の躁状態や興奮状態に対しても安易に処方が広がり、さらに問題なのは、こうした処方がきちんとした病気の診断のもとで行われるのではなく、子供の行動抑制(鎮静、管理)目的で多用されていることである。子供の飲酒が禁止されているのは、脳の発達段階でその弊害が判明しているからである。アルコールがダメで向精神薬が良いとする根拠はない。

3.1 抗精神病薬の投与は薬剤性の統合失調症を引き起こす
 子供への抗精神病薬の投与の最大の問題は、その投与が、薬剤性の統合失調症の発症要因であることだ。次の表は、米FDAに報告されている自発的副作用報告のデータベースに収録されているリスパダールの副作用発現状況である。リスパダールは、子供や高齢者に対し、適応外の処方が一番多くされている薬剤である。副作用として統合失調症関連の有害事象が報告されていることが確認できる。
リスパダール副作用報告

また次の表は、同データベースに収録されているリスパダールの副作用報告が行われた適応診断名の内訳である。約3万件の副作用報告のうち、4000件近くが適応症不明とされている。つまり、この薬が治療目的というよりも、別の目的で多用されていることを示している。
 さらに、ADHD治療やうつ病治療の過程で引き起こされた症状に対する対症療法としての投薬も想定される。
適応別副作用報告

4 子供への抗うつ剤の投与の問題点
 統合失調症と同じように、伝統的な精神病理学では、うつ病は35歳以上の人が発症するもので子供にはほとんど発症されないとされていた。現代精神医学は、うつ病に置いても、その伝統的な精神病理学を捨ててしまい、なんの新しい発見や研究もないままに、子供にもうつ病が発症するとした。

 抗精神病薬と同様に6~12歳の子供に対する治験は行われていない。つまり、効果も安全性も確認されていないまま、子供への投与が行われている。
4.1 子供のうつに抗うつ薬は効かない
 右の表は、2000年以降に発売された抗うつ剤の治験データをメタ分析した結果である。6~12歳の児童のうつに対して抗うつ剤には効果がないことが示されている。13~18歳に対してもその効果は8(効果が出るまでに8人必要)の効果しかない。
抗うつ薬のメリット

子供のうつに対する抗うつ剤投与は、8人中7人は効果が無く、副作用のみが出現する。抗うつ剤を投与された若年層の20人~50人に1人は自殺性リスクにさらされる。
次の表は、抗うつ剤の副作用、長期投与で生じる問題、SSRI服用による情動の変化を示したものである。大した効果がないにも関わらず、抗うつ剤の子供への投与は、こうしたリスクが軽視されている。

抗うつ剤副作用1-SSRI割賦症候群
1. 希死念慮のあるうつ病患者を割賦
2. うつ病が逆に悪化
3. アカシジア(強い焦燥と運動不穏)の惹起
4. パニックと不安の惹起
5. 躁や躁鬱混合状態の惹起
6. 不眠や睡眠構造の障害の惹起
7. 強迫的な自殺へのとらわれの惹起
8. 敵意を伴うボーダーライン状態の惹起
9. 脳波活動の変容の惹起

抗うつ剤の長期投与で生じる問題
・逆説効果(うつの悪化)
・双極性障害における抗うつ剤誘発性スイッチ
・抗うつ剤に対する耐性の出現
・種々の離脱反応の出現
-離脱による気分の正常化
-抗うつ剤中止による気分効用
-抗うつ薬離脱躁病・軽躁病(気分安定剤併用下でも出現)
-抗うつ剤の長期投与による脳の変化が元に戻るのには抗うつ剤離脱後も数か月以上かかる。

SSRIによる情動変化
1. 全般的な情動の変化
-全情動の強さが低下ないし情動欠如、情動平板化ないし鈍麻
-感情より思考に、感情の理解が困難に
-感情が偽者で人工的に感じる、情動コントロールが容易に
2. 要請感情の低下
-強さと頻度が低下(興奮、喜び、楽しさ、愛情、情熱、熱狂いずれも)
3. 陰性感情の低下
-強さと頻度が低下(悲しみ、怒り、攻撃性、不安、心配)

5 ADHD治療の問題
5.1 チェックシート診断は信頼できるか
総得点の14-16点以上が治療対象とされる。チェック項目は生物学的な病気の症状ではなく、行動の課題である。薬の効果の測定(治験)も、同チェックシートで測定されている。また
医師は、親や教師の記入したシートや報告で判断している。つまり実質的に診断しているのは親や教師であり、医師ではない。これは医療行為ではない。
5.2 ADHD治療に使用される薬剤の副作用
ストラテラ副作用(添付文書)
小児を対象とした国内臨床試験における安全性評価対象例278例中209例(75.2%)に副作用が報告され、主なものは頭痛(22.3%)、食欲減退(18.3%)、傾眠(14.0%)、腹痛(12.2%)、悪心(9.7%)であった。
日本人及びアジア人の成人を対象とした臨床試験における安全性評価対象例392例(日本人患者278例を含む)中315例(80.4%)に副作用が報告され、主なものは悪心(46.9%)、食欲減退(20.9%)、傾眠(16.6%)、口渇(13.8%)、頭痛(10.5%)であった。(成人適応追加時)
コンサータ副作用(添付文書)<小児AD/HD承認時>
AD/HD患児を対象として国内で実施した第II相試験、第III相試験及び長期投与試験の総症例216例中、副作用(臨床検査値異常を含む)は174例(80.6%)に認められた。その主なものは、食欲減退91例(42.1%)、不眠症40例(18.5%)、体重減少26例(12.0%)、頭痛18例(8.3%)、腹痛12例(5.6%)、悪心12例(5.6%)、チック11例(5.1%)、発熱11例(5.1%)であった。
6 副作用から拡大される多剤併用

 成人に対する多剤併用が、社会問題化し、不十分ではあるが診療報酬の減額という形で規制が行われた。国立精神神経研究センターの研究により、抗精神病薬の効果が単剤で十分であることが示され、減薬のためのガイドラインまで作成された。薬剤の治験は基本的に単剤で行われ、併用による効果も安全性も単剤でしか確認されていない。

同クラス内多剤併用率
2002~2004年→2008~2010年
抗精神病薬36.1%→27.2%
抗うつ薬7.0%→7.7%
抗不安・睡眠薬25.8%→30.4%

クラス間多剤併用(カクテル処方)
2002~2004年→2008~2010年
抗精神病薬63.5%→60.9%
抗うつ薬70.4%→76.9%
気分安定薬78.6%→92.9%
抗不安・睡眠薬53.0%→61.5%
 成人でも確認されていない多剤併用の弊害は、子供においてはより重篤な問題を引き起こすことは間違いない。多剤併用、多剤大量処方は、わが国独自の悪弊であるが、今回の研究で、6割から9割の処方例で、子供に対しても同じように行われていることが確認できた。
諸外国の向精神薬処方を受けた未成年におけるクラス間多剤併用の割合は、米国19%、オランダ9%、ドイツ6%である。

7 まとめ-2010年以降の動向
 今回の外来の診療報酬明細書のデータを使った研究は、わが国の子供への向精神薬の処方の実態を示した初めてのものである。しかし、本データは2010年までのもので、ここ数年の実態を反映していない。
 2005年の発達障害者支援法の施行以降、学校の現場や福祉の現場では、発達障害概念の普及と共に、精神科受診を奨める政策が強力に推し進められてきた。
 2010年のデータでは1000人当たり3~4人が向精神薬の処方を受けていたが、2015年現在、ADHD治療薬の売上の伸びから推測できるのは、すでに2010年の倍以上の子供に薬が処方されているということである。
 大変、大雑把ではあるが、現在の我が国では約100人に1人くらいの子供に向精神薬が処方されているということだ。先行する米国では、既に10人に1人の子供が精神病と診断され、投薬を受けているが、わが国も着々と同じ道を歩いている。

参考資料
*1 精神神経学雑誌(日本精神神経学会誌)2014VOL116NO.11
日本における子どもへの向精神薬処方の経年変化 著者は、奥村泰之、藤田純一、松本俊彦氏
―2002年から2010年の社会医療診療行為別調査の活用―
*2 日精協誌、第31巻・第4号2012年4月号
『大うつ病の薬物療法のエビデンスアップデート:無効、増量、自殺性』
京都大学大学院 医学研究科健康増進・行動学分野教授 古川壽亮
*3 精神科治療学多剤大量処方特集2月号
「気分障害治療における多剤併用がもたらす精神症状の複雑化-田島治医師」
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  1. 2015/03/18(水) 14:05:18|
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